最初にその男を見た時、私は古本屋だと思った。その男は下北沢南口前の路上に古い漫画本をずらりと並べ、その一冊を手に取って読み上げていた。年の頃は30才ぐらいだろう。髪はボサボサ、こわれかけたような眼鏡を掛け、頭にはタオルで鉢巻きをし、足はなんと地下足袋を履き、大きな声を出して漫画本を読み上げていた。
昨日、行きつけのバーで飲んだ後、駅に向かっていたらまたこの男がいた。よく見ると、誰かに漫画本を読んであげているのである。この男は本を売るのが目的ではなく、本を読むのを商いとしているのである。ただ、その読み方が普通じゃない。何と説明すればいいだろうか、それはハムレットの台詞を聞いてるような、高貴さと狂気さが入り交じり、そして失礼かもしれないが滑稽なのである。
並べられた漫画の中には、宮崎駿のアニメシリーズがあった。私は「となりのトトロ」をこの男に読んでもらいたかったが躊躇した。この男には申し訳ないが、聞き手が私ひとりでは私自身が恥ずかしいのである。今度行くときは誰かと一緒に行かなければならない。そして必ず「となりのトトロ」を読んでもらわなければ。
フェイク、フェイク、フェイク!
1 day ago
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