Sunday, October 26, 2014

手相



  昨日今日と近くの広場でイベントが行われた。イベントは半年に1回行われ、近隣の飲食店が屋台を出して自慢の一品を争う、分かりやすく言えば地元密着型のB級グルメコンテストである。
 会場にはグランプリを狙う焼きそば、ホットドック、カレーに焼き鳥などの屋台が軒を列ね、そして、フリーマーケットの店や骨董品などのお店も出店する。中央にはステージが作られ、生バンドの演奏やダンスなど披露され、毎回私はこのイベントを楽しみにしている。

 昨日、昼過ぎに会場へ行き、ひとりでハイボールを飲んでバンドの演奏を聴いていたら、ご近所のY子さんに出会した。Y子さんは不意に私に左手を差し出し、たった今、会場に店を出している手相師に見てもらったとのこと。「結構当たってたんですよ。」と言って、金色のカラーペンでなぞられた自分の手相をしげしげと見つめていた。
 それならば私もと、Y子さんと一緒に手相の店へ行った。手相師は年齢40才位の男性。占い師と言うよりも、風貌はミュージシャンのようである。手相師の前に座り両手を差し出すと、金色のカラーペンで私の左手の線をなぞりながら説明を始めた。
 まずは生命線をなぞりながら、健康には問題ないですねと手相師は言った。次は感情線に目を凝らしながら、とても心が広い方だと言う。ちょっと照れながら聞いていると、勘が鋭いがそれを役立てていない。お金にあまり興味はないようだが、それでもお金に困ることはない。そして、幼少期は複雑な環境で育ったようですねと言った。当たっているかどうかは微妙なところだが、手相師の説明を頷きながら聞いた。
 今度は右手を見ながら、左手と比較して行く。手相師の話しによれば、右手は過去の相のようである。右手はマスカケになっており、本来、頑固で引っ込み思案の性格だったが、それが左手の相へ変化して行ったのだと言う。
 手相師はまた左手に戻り運命線をなぞりながら、これからは自分のことに集中すべきですと言った。例えばあなたは飲み会に言っても、浮いている人はいないかと気遣い、飲み会自体を存分に楽しんでいないのだと言う。
 そして、私の左手を握りながら手相師は、この手相の欠点を言えば、もっとあなた自身がやりたいことを追求することですと言い切った。分かりやすく言えば、少年がプロ野球選手になることを目指し、そしてそれを目標にひたすら頑張る。やがて運気は上昇し努力が実ってプロ野球選手になる。そうすると人脈も広がり、お金も入って来るようになる。しあわせになるセオリーを手相師は少年とプロ野球を例に説明した。
 説明が終わると手相師はペンを置き、それにしても珍しい手相ですねと言った。私は私の手相のどこが珍しいのかさっぱり分からない。それでも、これから生きて行くヒントをもらったような気がした。

 それから生バンドの演奏が響く中、私とY子さんはステージ前のイスに座ってハイボールを飲みなが話し込んだ。二人で金色のカラーペンでなぞられた左手を差し出しながら、これからどう生きるべきかを、ああでもないこうでもないと話し込んだのだった。

















Saturday, October 18, 2014

うどん





 金曜の夜。小林君と二人でうどんを食べた。
 俺はえび天、小林君はきつねだ。

 こっちでズルズル、あっちでズルズル。
 ズルズル、ズルズル。ズルズル、ズルズル。
 あ〜、ズルズル。ふーふー、ズルズル。
 ズルズル、ズルズル。ズルズル、ズルズル。

 わずかに俺の方が早く食べ終えて、小林君を見た。
 小林君はまるで祈りを捧げるようにどんぶりを両手で抱え上げ
 最後の一滴を飲み干していた。
 そしてその最後の一滴を飲み干すと、静かにどんぶりをカウンターに置き
 ニコッと笑った。 

 金曜の夜、僕らはうどん屋でささやかに週末を迎えた。





 

Monday, October 13, 2014

スタンドバイミー

 
 三連休、郷里に帰り旧友たちと長崎本線沿いを歩いた。最近は飲み会だけの企画だったので、久しぶりにみんなで歩いてみようかと、友人のYが言い出したのである。
 色々とスケジュール調整に難航したが、それでも4人が集まった。朝5時に起きておにぎりを握り、水筒にお茶を入れて集合場所であるJR中原駅へと向かった。
 駅に到着するとすでにYは駅舎の前で私たちを待っていた。煙草を一本吸い終わると、線路沿いの道を次の吉野ケ里公園駅まで歩き始めた。右手には黄金色に輝く田んぼが一面に広がっている。時折、電車が私たちの左側を通過して行き、南からの風がぎっしりと実った稲穂を揺らす。歩き始めてから2時間。あっという間に目的地の吉野ケ里公園駅に到着した。
 その様子をフェイスブックにアップしたら、「スタンドバイミーみたいですね。」と近所の人がコメントをくれた。そのコメントを読んで、少年時代のことを思い出した。少しだけやんちゃだったあの頃を。今度はちょっと線路上を歩いてみようかと、思ったのだった。