Monday, February 22, 2016

山荘の夜

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 談話室ではストーブが焚かれ、登山客たちがそのストーブを取り囲んでいる。コーヒーを淹れる者がいて、食事を作る者がいる。山を降りてささやかに祝杯を上げる者がいて、明朝、山頂を目指そうと準備する者がいる。誰もが満ち足りた顔をし、居合わせた者達が一夜の思い出を共有している。それぞれの人生の中で、この夜のことをきっと大切に綴じ込むのだろう。
 月明かりしかない山の中で、笑い声とともにそんな温かな光が辺りを照らしていた。



Sunday, February 21, 2016

大船山

最後に追加した項目-195

 2月6日、久住の大船山に登った。
 登山口まで二時間歩き、山道に入った。休むことなく続く急峻な道を登り続け、ようやく山頂に近づくと、吹雪に見舞われた。半世紀生きて来たが、これほど寒さを恐ろしく感じたことはなかった。 おにぎりや飲料水は凍って、つま先は感覚を失いつつあった。
 西から吹き付ける雪は尾根にぶつかると大きく舞い上がり、そして次の峰を目指してまた吹雪いて行く。美しさよりも恐ろしさを感じた。大袈裟かもしれないが、生きて山荘にたどり着くか不安だった。そんな中を友人二人と歩き続け、ようやく山荘が見えた時、生きて帰れたと安堵した。
 今もあの寒さが身体の芯に残っているような気がする。そして掌には山荘のストーブの暖かさも。あれから、ずっと残っているような気がするのである。