Sunday, November 29, 2015

山荘の夜

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 二週間前、一夜を過ごした久住の山荘の余韻に、今も浸っている。当日は初冠雪コンサートが行われ、居合わせた登山客たちは皆、木造の建物に優しく響き渡る弦楽器の音色にうっとりした。最後には「坊がつる讃歌」をみんなで合唱し、 名残惜しさを引きづりながら、それぞれの部屋に戻って行った。
 あれから毎日のように、スマートフォンで牧ノ戸登山口のライブカメラを見ては、懐かしんでいる。通勤途中の地下鉄の中で見て、会社の食堂で弁当を食べながら見て懐かしんでいる。

 数日前から久住は白い雪景色に変わった。その雪の中をリュックを背負った登山客が行き来している。いつの日か雪の久住に登ってみたいと、暖かくしたマンションの一室でコーヒーを飲みながらその雪景色を眺めては、にんまりしている。楽しかった山荘での夜を思い出しながら、にんまりしているのである。





Tuesday, November 17, 2015

坊がつる

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 11月14日、久住に登った。前回の久住登山から3ヶ月半、この日のために準備をしてきたが、当日は雨に見舞われた。縦走の予定を変更し、ひと山だけ登って山荘に向かった。
 山荘で一夜を明かし、翌朝、山荘の前に広がる坊がづる湿原の中を歩き、山を降りた。写真がその坊がつる湿原である。久住の山々に囲まれた広大な窪地に、湿原が広がっている。昨日雨を降らせた雲は東に流れ、その隙間に顔をのぞかせた青空から朝日が差し込み、ススキの穂を黄金色に輝かせている。それは実に素晴らしい晩秋の風景であった。
 その黄金色に輝くススキの海を私たちは歩いた。一夜の山荘での楽しい思い出をリュックに詰め込み、間もなく冬を迎える湿原の中を。ミヤマキリシマが赤く広がる初夏に再訪を約束しながら、私たちは坊がつるを後にした。



 

Sunday, November 01, 2015

愛車

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 昨日、長年乗ったマイカーを手放した。写真は先週日曜日、最後の洗車を行い、自宅近くの港で撮った物である。今までの感謝を込めて、妻と二人で隅々まできれいに拭き上げた。
 この車を購入した時、上の娘は5才だった。この車と一緒に転勤を繰り返し、転勤先であちこちドライブを楽しんだ。神奈川にいた頃は、ディズニーランドに行ったり、長野に行ったり。箱根や鎌倉・湘南と、毎週のように出掛けていた。
 あれから15年、上の娘が大学生となって家を出ると、家族でドライブすることもなくなり、車もほとんど乗らなくなった。そろそろ手放す時期だと思った。
 車は自動車販売会社を営む友人に引き取ってもらうことにした。昨日、その会社に行き友人にキーを渡し、書類に印鑑を押した。引き取ってもらうにあたって私は、友人に二つのお願いをした。 友人は中古車の海外販売も行っている。国内ではスクラップ同然の私の車だが、海外ではまだ活躍の場があると思い、できれば海外へこの車を売却して欲しいとお願いした。そして、可能であれば、新しいオーナーと写る車の写真を欲しいとお願いした。それが、私ができるこの車へのせめてもの恩返しだと思った。
 友人は即座に了解し、海外販売のオペレーターを呼び指示を出した。オペレーターの女性も、こころよく私の願いを引き受けてくれた。うまくいけば、アフリカの大地で新しいファミリーに迎えられた、この車の写真を見ることができるかもしれない。

 手続きを済ませ、最後にボンネットを3回撫でて駅に向かった。長い間ありがとう。君も我が家の一員だったと心でつぶやき、駅に向かった。