0509 173
Originally uploaded by bonkley.
姉の車を借りて家内たちを福岡の実家に送り届けた。姉は止む無く自転車で仕事に出かけていた。心配する年頃ではないが、帰りが遅かったのでちょっと表に出てみた。外は月明かりが辺り一面をきれいに照らしていた。月夜の晩である。あまりにきれいだったので、カメラを持ち出し姉が戻るまで写真を撮って時間を潰した。
中原中也の詩に「月夜の浜辺」という詩がある。私はこの詩をまだ結婚する前に、中也ファンの家内から教えてもらった。実に繊細でロマンチックな詩である。
「月夜の浜辺」 中原中也
月夜の晩に、 ボタンが一つ
波打ち際に、 落ちていた。
それを拾って、 役立てようと
僕は思ったわけでもないが
なぜだかそれを捨てるに忍びず
僕はそれを、 袂に入れた。
月夜の晩に、 ボタンが一つ
波打ち際に、 落ちていた。
それを拾って、役立てようと
僕は思ったわけでもないが
月に向かってそれは抛れず
波に向かってそれは抛れず
僕はそれを、袂にいれた。
月夜の晩に、拾ったボタンは
指先に沁み、 心に沁みた。
月夜の晩に、 拾ったボタンは
どうしてそれが、 捨てられようか?
そうこうしている内に姉は自転車に揺られながら帰ってきた。月夜の晩に私は何も拾わなかったが、写真を一枚撮ることができた。
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