Sunday, January 07, 2007

本屋の店員

 駅に娘たちを迎えに行った際、時間があったので駅ビルにある本屋に立ち寄った。新刊コーナーを覗いたら村上春樹の本があったので、早速手に取りレジに並んだ。
 レジカウンターの中に女性の店員が5名ほどいたが、皆薄いブルーのボタンダウンシャツを着ていた。どうやらこの店の制服らしい。ボタンダウンの下にハイネックのセーターを着たりして、知的でいかにも文学少女(おばちゃんもいたけど)のような、大学ではアメリカ文学でも専攻していそうで、ドーナツが大好きそうで、Pコートを着ていそうなそんな感じがしてよかった。
 順番を待つ間その文学少女たちを眺めていると、ひとりだけ襟のボタンを留めていない店員がいた。背が高く、髪はポニーテールにしていたがちょっとまとまりが悪く、しかも不機嫌そうな顔をしていた。
 彼女は何故ボタンを留めていないのだろう? 留め忘れただけなのだろうか。私も日頃BDシャツをよく着る。我が社はノーネクタイOKなのでワイシャツはすべてBDシャツを愛用している。私もかなりずぼらな性格で、スラクッスにベルトを通すのを忘れたり、ファスナーをし忘れたりすることがよくあるが、BDシャツの襟のボタンを留め忘れることはない。あり得ないのである。
 恐らく彼女はボタンを意図的に留めていないのだ。それはファッション性によるものではなく、何か自分の不幸せさを、ボタンを留めない事によって表現しているようなそんな気がした。
 人生面白くないこともたくさんある。むしろ面白くないことの方が多かったりする。今度来るとき迄には襟のボタンを留められるような、そんな出来事が彼女にあっていて欲しいと思ったのだった。

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