Saturday, November 04, 2023

唐津くんち

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 昨日、唐津くんちに行ってきた。写真は一番曳山、刀町の赤獅子である。文政2年(1819)に製作された曳山で、14体ある曳山の中で最も歴史のある曳山である。
 以前、転勤で唐津に一年ほど住んだことがある。今から20年以上前のことになるが、上の娘が小学校に上がった年だった。家族で宵山から見に行き、唐津の町中を曳山を追いかけ歩いた。唐津に転勤になる前長崎に住んでいたが、長崎くんちとはまた違った勇壮な曳山に魅せられたのだった。

 唐津に引っ越しして2年目の夏に突然東京転勤を命じられた。初めての東京勤務。まったく土地勘もない中、知人の勧めで小田急線沿線のとある町に新居を借りることにした。慣れない東京暮らし。家内はまったく友人もおらず、話し相手になってくれる人もいない。気丈な女房だが、引っ越して1ヶ月も経たない内から九州に帰りたいと言い出した。

 そんなある日、回覧板が回ってきた。回覧板には今度の日曜日に曳山まつりが町内で開催されると書かれてあった。気になって回覧板を読むと、佐賀県唐津市に伝わるお祭りが由来だと書かれている。お祭りの主体となっているのは久敬社塾という学生寮で、旧唐津藩主・小笠原家を中心に在京唐津人の勉学向上を目的として明治時代に創設され、この塾が町の自治に貢献したらしく、塾生たちが郷里を懐かしみお祭りを始めたと回覧板には書いてあった。偶然とは言え、何だかこの町に誘われてきたような不思議な気がした。

 翌週の日曜日の朝、お隣の家族と一緒にその塾に向かった。塾に近づくに連れ唐津くんちのお囃子の笛の音が聞こえてくる。ようやく塾に辿り着くと、この刀町の赤獅子が宿舎の前に鎮座していた。
 家族四人で赤獅子を見上げる。お囃子の笛の音の中しばらく呆然となる。女房が嗚咽を上げて泣いている。「よく来たな。心配するな。」とこの赤獅子が私たち家族に言ってくれたような気がしたのだった。




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