Sunday, August 07, 2005

会津喜多方 vol.3









  
 マスターに教えてもらった銭湯でひと風呂浴びる。石鹸を買うのも馬鹿らしかったので、他の客から貸してもらう。聞けばその御老人も東京から来たという。もともと喜多方の出身で上京して約半世紀。新宿は大久保界隈に住んでいるらしく、身内の初盆で昨日帰省したらしい。風呂から上がると御老人はバスタオルまで使えと貸してくれた。東北人の人情の厚さを感じる。
 ”君影蔵”に取って返して、今度はカウンターに陣取る。時間は午後4時。帰りの便の発車時刻まであと1時間ちょっと。ぎんぎんに冷えたウオッカをロックでもらう。ちびちびと舐めるように飲みながらマスターとの会話が始まる。ふと、マスターが従弟に出身地を尋ねた。従弟が私たち二人とも佐賀県人であることを告げると、アイスピックで氷を割っていたマスターはぼそっと「仇同士ですね」とひと言つぶやいた。思わず笑ってしまったが、百年以上経った現代でも「戊辰戦争」の悲劇は会津に脈々と語り継がれていたのである。”戦争”という言葉は会津では「大東亜戦争」を指すのでなく、「戊辰戦争」を指すとは聞いていたが、「その通りです。」とマスターが頷いた。
 話は盛り上がったがもう時間だ。記念にとコースターをもらい再訪を約束し店を後にした。外はまだ暑かった。名残惜しさを感じながら従弟とさびれた商店街を駅の方へと向かった。

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