Saturday, October 24, 2015

三喜屋酒店

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 三喜屋酒店は博多駅東にある酒屋であり、常連たちは愛着を込めてミキハウスと言う。通常の酒屋と異なるのは、角打ち(立ち飲み)が主の酒屋であることであり、恐らく販売よりも圧倒的に角打ちの売り上げが多いだろう。
 決して広くない店内にはU字の長いカウンターがあって、そのカウンターにサラリーマンたちが鈴なりになって酒を飲んでいる。満員でやむなく店の前でビールケースをテーブル代わりにして飲むことも多々ある。
 角打ちをさせる酒屋は他にもたくさんあるが、決定的な違いはキープが出来ると言う点であり、常連客の多くは焼酎の一升瓶を目の前に置いて酒を飲んでいる。一升瓶にはマジックで名前が書かれており、そして巾着が一升瓶の首からぶら下がっている。その巾着には小銭が入っており、仲間と連れ立って来るサラリーマンたちは、飲んだ量に見合うお金をその巾着に入れて、次回キープのために備えるのである。
 この店の大将は今年78才、店は開業して今年50年を迎える。跡取りはなく、奥さんとパートのおばちゃんの計3人で店を切り盛りしており、ごった返す店内を大将たちが忙しく駆け回っている。
 写真は丸天と揚げピーナッツである。私はいつもこの二品を酒のあてにする。この店の流儀で、丸天などの練り物には一味唐辛子を掛けて食べる。乾き物の他に〆鯖、冷や奴、アジのみりん干し、それに缶詰などがある。どんなに飲んでもひとり1,500円を超えることはない。
 最近気になるのは奥さんの体調のことである。今年の春から体調不良で長期に休まれることが多くなって来た。高齢になられたご夫婦が、いつしか店を閉められる日が来ることを、常連たちは覚悟している。ご夫婦の健康を気遣いつつ、その日がずっと先であって欲しいと常連たちは思いながら、今日も酒を飲んでいるのである。





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