Tuesday, September 22, 2009

長門にて

IMG_5217.JPG by you.

 シルバーウィークの中日、家族で長門に行った。長門は山口県の北部に位置する、山陰の小都市である。そもそも私が、角島という響灘に浮かぶ小島に行ってみたいと言い出したのがきっかけなのだが、だったら長門にある金子みすゞ記念館まで連れて行けと家内と娘にせがまれ、足を延ばすことになった。
 金子みすゞ記念館は、長門市の仙崎という漁師町にある。私の場合、仙崎と言えばすぐ思い浮かべるのは蒲鉾なのだが、最近では金子みすゞの育った町として、観光スポットになっているようである。記念館はその仙崎の、昔は商店街として賑わいをみせただろうと思われる通り沿いに、実家であった書店を再現し建っている。写真はその実家の二階の、みすゞが二十歳まで使用していた言われる部屋である。
 復元された家屋の奥に、この記念館の本館があり、そこには彼女の年譜と、そして直筆の詩が展示されている。年譜にそって館内を進み、そして詩を鑑賞して行く。あまり金子みすゞに詳しくない私でも、詩のいくつかには聞き覚えがあった。万物を慈しみ、独自の観点から書かれたその詩の純度は高く、どこか仏教的な雰囲気さえ漂っている。
 しかし何故か、どの詩にも一定の暗さを感じてしまう。それは幼くして父を亡くした彼女の生い立ち、そして不遇の結婚生活がその詩に影を落としているのだろう思うのだが、それだけでは釈然としないものを感じる。彼女の年譜を見る限り、そこには貧しさを感じさせるものはない。むしろ、当時女学校まで卒業しているのだから、経済的には恵まれていたと思われる。これは私の勝手な推測だが、彼女の詩の多情さは、母親からの愛情の欠乏が根底にあったのではないか。彼女の詩を読み進むうちに、ふとそんな気がした。
 妻たちよりひと足先に館を後にした。館を出ると金木犀の香りが風に乗って漂ってきた。その香りに誘われ裏庭に回り、しばらく金木犀を眺めた。金木犀の香りの中で、妻と娘が出てくるのをしばし待った。









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2 comments:

sumiretti.com said...

金子みすず記念館に行かれたんですね
感性の鋭い女性故に自己を犠牲にしてしまった不遇な人生ですね

わらいという詩が好きです

言葉にならない幸せがあることを
知ったのはついこの頃です

笑顔の伝播で世界中が幸せになりますように。

bonkley said...

sumirettiさんもお好きでしたか。
女性の方は、好きな方が多いですね。
山口県は有名詩人が多いんですよ。
中原中也や種田山頭火も山口出身です。
私は山頭火が好きですね。(ラーメン屋じゃないですよ)