Sunday, April 13, 2008

終電

 先週も東京出張だった。金曜日の朝7時に福岡を発ち、品川の事務所に10時頃入った。それから延々と8時過ぎまで打ち合せを行い、ようやく事務所を出た。ホテルでチェックインを済ませ、疲れが溜まっていたが同行していたスタッフと飲みに行くことにした。どこに行こうかと迷った挙げ句、下北沢の行きつけのバーへ行くことにした。毎週のように出張で来ているが、会社の近くに宿を取るため、このところ下北沢から足が遠のいていたのである。

 実に半年ぶりだった。焼酎を飲みながら、この界隈の無くなった店のことをママと話した。あそこの焼き鳥屋はどうなっただの、あそこのバーは何処に移転しただの。いろいろ話しをしていたら、この店のすぐ裏にあった1軒のバーの話しになった。その店は九州出身のニューハーフの人がやっていた店で、同郷のよしみもあって私もちょくちょく足を運んでいた。1年半ほど前に店が閉まり、その後どうなったか気になっていたのである。するとママが「その店だったら、踏切を渡った路地裏で近頃また始めたらしいですよ」と教えてくれた。ママに詳しく道を聞いて、私たちは早速行ってみることにした。

 ママに聞いた通り、踏切を渡ると目印となる居酒屋があった。そこの脇の路地を入った奥のマンションの1階にあると聞いてたが、どこにも看板が見当たらない。その辺りのマンションをスタッフと二人して探し回ったが見つからない。道をちょっと戻って、もう一度ママが教えた通りに行ってみると、マンションの1階にようやくそれらしき店を発見した。店と言っても看板やネオンは一切なく、マンションのドアに、フランス語らしき店名があり、店名の下に会員制と書かれている。さっきママが会員制らしいと言っていたのを思い出し、スタッフを呼んでここじゃないだろうかと言うと、スタッフは「ここで間違いないです」と頷いた。そのスタッフは九州から出たことはなく、もちろんこの界隈を歩くのも初めてである。そのスタッフが刑事のようにここで間違いないと言うのが可笑しかったが、私もここしかないと思い、その会員制と書かれたドアを押してみた。

 ドアを開けると懐かしい顔がそこにあった。ニューハーフのママはよくこの店が分かりましたねと感心し、私たちの訪問を喜んでくれた。居合わせたお客さんも一緒になって、九州の話しで盛り上がったが、気付いたらもう12時を過ぎている。私たちは慌てて腰を上げ、再訪を約束し下北沢駅へと急いだ。私は急ぎながら当時のことを思い出していた。1年ちょっと前のことが、遠い昔のような、夢でも見ていたような気がしたのだった。

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