Sunday, June 10, 2007

龍の通る道

 最近、週末になるとマンションを見て回っている。そろそろ終の住処を見つけなければならない。近隣の新築マンションのモデルルームを見学しては、ああでもないこうでもないと女房と言い合っている。なかなか理想的な物に出会さない。そもそも、理想自体が虫が良過ぎるのかもしれない。
 自宅近くにとある新築マンションがあって、そこに何度も足を運んだ。あまりに行くものだから営業のお兄ちゃんと仲良くなって、今日はそのお兄ちゃんを誘って家内と三人で昼飯を食べに行った。
 食事をしながら、あれこれまたマンションの話を彼から聞いた。すると彼が、このマンションは風水学上も良いのだと言い始めた。
 お兄ちゃんの話では、先日、とある客が風水師を連れて見学に来て、マンションの家相を観たらしいのである。マイホームはサラリーマンにとって一生一度の買い物である。占いなどあまり気にする方ではないが、その客の気持ちが分からないでもない。興味深く聞いていると、風水師はマンション前の道を指差し、龍が通る道だと言ったらしい。
 龍の通り道。風水学上で気の流れる道を指し、その流れを妨げてはならないとされている。気の流れを良くする事によって、一家は繁栄し富みに恵まれるらしい。中国大陸には大きな三つの龍脈があって、そのひとつが香港のザ・レパルスベイという高層ビルに突き当たるため、わざわざ建物の一部を空洞にしたことは有名な話である。
 その風水師の話によれば、福岡の龍は荒津山(西公園)に舞い降り、一直線に参道を通り大濠公園の池へと向かうらしい。だから参道沿いに建つこのマンションは、大変縁起が良いらいしいのである。
 食事を終え、ひとりで西公園へ向かった。光雲神社の石段に腰掛け、暫し参道を眺めた。ここを龍が通っているのである。夜明け前にそのマンションのベランダに立てば、参道を行く龍が見れるような気がした。一瞬突風が吹き、参道の木々が大きく揺れたかと思うと、銀色に輝く龍が音も立てずに一気に通り抜けて行く。そんなことを空想していると、無性にそのマンションが欲しくなったのだった。   

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