Sunday, April 14, 2013

玄界島

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 玄界島は博多湾の入り口に浮かぶ周囲4kmの小さな島である。昨日、後輩と二人この玄界島を訪れ、遠見山という山に登った。
 玄界島は2005年に起きた福岡県西方沖地震の被災地として、その名を有名にした。200軒ほどの家屋の大半が、半壊あるいは全壊の被害を受け、島民700名の内、島の代表者10名を残して全員が避難した。
 私は震災の翌年、転勤により神奈川から福岡へ引っ越したのだが、当時、新居の近くにある港の公園に、玄界島の方が避難している仮設住宅があった。その仮設住宅を見て、あらためて被害の甚大さを知ったのだった。

 玄界島は島自体がこんもりと隆起した山になっており、平地は南側の漁港あたりに少しあるのみである。現在、島は整備され当時の被害をうかがわせるものは何も無い。民家は島の南側の斜面に整然と建て直され、太陽の光がその家々をまぶしく照らしている。島内は静かな波音に包まれ、時折聞こえるのは船の汽笛だけであり、その静寂の中に老人は釣り糸を垂れ、女性たちは海藻を干している。

 山に登り、そして島を一周してみた。歩きながらこの島を突如襲った地震のことを考えてみる。春先のおだやかな土曜日に、突如台地は揺れ山肌は崩れ、民家は押しつぶされる。島民は着の身着のままで船に乗り本土へ避難する。今まで、地震がほとんど無かった福岡では、誰もが想像もしなかっただろう。そんな日が突然やってくるとは思いもしなかっただろう。
 写真は島の東側の浜から玄界灘を撮ったものである。エンジンが浜に打ち捨てられていた。震災とは関係ないかもしれないが、この錆びまみれのエンジンが当時を物語っているかのように見えた。突如島を襲った悲劇を物語っているかのように思えて、僕は無心にシャッターを押した。







 

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