Saturday, September 22, 2007

博多港

 三連休の初日、朝からひとり自転車に乗って博多港に行った。写真は博多港の街灯であるが、よく見ると街灯の先が船の形をしていて可愛らしい。
 博多港は戦後、引揚援護港の指定を受け、中国東北部や朝鮮半島から139万人の引揚者を迎え、また、韓国や中国の50万の人々を見送った歴史を持つ。港内の記念碑にそう書かれていた。祖国に思いを馳せたたくさんの人々が、この桟橋に降り立ち、あるいはこの港を後にしたのである。

 母が小学生の時、クラスに韓国人の女の子の友達がいたらしい。戦争が終わり、その子の一家は韓国に帰ることになった。彼女は教室でアリランを歌い、みんなにお別れしたらしい。彼女も恐らくこの港から故郷を目指したのであろう。しかし、彼女を乗せた船が、祖国にたどり着くことはなかった。祖国を目の前に転覆し沈没したらしいのである。
 お盆に実家に帰ったとき、みんなで昔の話をしていたら、母がそんな話を聞かせてくれた。悲しい話である。アリランを教室で歌う少女、それを黙って聞いている母たち。その光景がまるで私もその場に居合わせたかのように、ありありと脳裏に浮かぶ。
 最後に彼女は船のデッキに立ち、どんな思いで博多の街を見たのだろうか。せめて魂だけは海を渡り、祖国に帰り着いたと信じたい。  

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