Sunday, May 14, 2023

豊味軒

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 写真は島根県の益田駅前にある中華料理屋「豊味軒」のラーメンである。3月に友人たちと山陰を旅し、列車の乗り換えで益田駅で途中下車し立ち寄った。

  店の中はテーブルのセットが5つ。ソファーのような革張りの椅子に白いテーブル。カウンター席はなく中華料理屋と言うよりも、昭和の喫茶店のような雰囲気である。店内はほぼ満席で途絶えることなく客が出入りしていた。

  豊味軒の開業は1960年。益田市に初めて出来た中華料理屋らしい。翌年の1961年に益田駅の駅舎(現駅舎)が竣工しているから、その1年前に豊味軒は開業している。当時は駅名も益田駅ではなく石見益田駅だったようである。戦後の荒廃からようやく復興を果たし、急速に工業化が進もうといている高度経済成長期の真っ只中に豊味軒は開業した。

 おそらく益田市民はこの店にまつわる思い出があるだろう。家族やあるいは会社の仲間とテーブルを囲み、みんなで談笑しながら中華料理に箸を伸ばした良き思い出があるだろう。そんな空想をさせてくれる店である。

  そんな雰囲気の中で鶏ガラスープの優しいラーメンを食べた。勘定を済ませレジに置いてあった出前用のメニュー表をもらい店を出る。乗り込んだ列車の中でそのメニュー表をしばし眺めながら、もし今度行くことがあったら何を食べようか、そんなことを考えながら益田を後にした。



Sunday, May 07, 2023

九重

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  久しぶり九重を歩いた。妻と二人、博多駅5時13分の始発に乗り、久留米駅で久大本線に乗り換え、豊後森駅に8時前に到着。豊後森からはコミュニティバスに乗って飯田高原へ向かう。

 連休初日は清々しい五月晴れの天気に恵まれた。膝の調子が悪いので山には登らなかったが、飯田高原をゆっくりと歩きながら宿へと向かう。鳥たちのさえずりが聞こえ、道端には小さな花々が可憐に咲き、時折吹く風が草原の草を撫でる。正面に見える山々を女房に自慢気に説明しながら、初夏の陽気の中をひたすら宿まで歩いた。

 宿に着くと久しぶりに合う宿の息子が温かく迎えてくれた。すぐに温泉に浸かることにする。風呂は貸切状態。湯船に浸かりながら足を揉み、自分の足を労う。ほのかに硫黄臭のするお湯が体全身に染み渡っていくような気がした。

 風呂から上がりビールを飲む。山あいの宿は日が落ちると冷え込んできた。薪ストーブに火が入り、居合わせた登山客とストーブを囲みながら登山談義を咲かせる。女将さんの山菜料理を肴に酒は進み、夜は深々と更けて行った。

 翌朝、朝食を済ませ女将さんが淹れてくれたコーヒーを飲み終え宿を後にした。妻と二人、バス停までの道を歩いて行く。何度も振り返りながら見送ってくれた女将さんと息子に手を振り、森の中の道を歩いてバス停に向かった。


Sunday, February 14, 2021

志賀島

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 土曜日、写真を撮りに行こうと意を決し、博多港から船に乗って志賀島へ向かった。志賀島は博多湾の北部に位置し、島とは言いながらも砂州により陸続きになっている半島で、「漢委奴国王」と刻まれた金印が発見されたことで有名なところである。

 志賀島へは何度も行ったことはあるが、船で渡ったのは子供の頃に父に連れられて海水浴に行った以来である。埋め立てにより大きな変貌を遂げた百道地区。そのシンボルとしてそびえる福岡タワーと赤銅色に光る福岡ドーム。当時と変わらないのはふ頭に立つ博多ポートタワー(博多パラダイス)がだけである。ひとり船上から風景を眺めながら、しばし昔の記憶を辿ってみたのだった。

 


Monday, February 01, 2021

グリーンカレー

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 土曜日の夕方、女房がカレーをみんなで食べに行こうと言い出した。女房と娘が好きなのは、今流行りのスパイシーでシャバシャバしたカレーである。私が好きなカレーは欧風の昔ながらの洋食屋が出すようなカレーだ。どこの店に行くのか?と尋ねるが、店まではまだ決めていないようだ。
 どこにしようかと女房と娘が話している横で、そういえば近所のライブハウスのO君がコロナでライブができないからと、カレーのイートインを始めたのを思い出した。
 私は女房と娘にO君のライブハウスに行ってグリーンカレーを食べる提案をしたら、娘がそこで良いよと言ってくれたので、家族三人で歩いてO君のライブハウスに出かけた。
  
 ライブハウスに着くとO君と従業員のK君が明るく迎えてくれた。バーコーナーのテーブルでカレーができあがるのを待つ間、従業員のK君が娘にステージの方を見せてくれた。
 K君が娘と女房に音響のことやライブのことなどを説明してくれる。薄暗いステージにはPearlのドラムセットが置いてあり、ドラムの縁に入口の照明の光が少しだけ反射して見えた。そのドラムセットの前でK君と娘と女房の3人で写真を撮って、バーコーナーに戻るとほどなくグリーンカレーが出来上がった。写真がそのO君が作ったグリーンカレーである。
 この手のカレーを私は普段食べないが、ココナッツミルクの味がする本格的なグリーンカレーではないか。あっという間に食べ終えると汗が頭からじわじわと吹き出してきた。

 新型コロナはいまだに終息する気配がない。そんな中でカレーを作って、何とかこの苦境を乗り越えようと頑張っているO君たち。明るく振る舞う彼らに頭が下がる思いがした。帰りに、配達もしますからとO君がメニューが書かれたチラシをくれた。
 桜が咲くころにはライブが再開できるようになるのだろうか。いや、必ずなってほしいと思いながら家族三人店を後にした。





Sunday, July 22, 2018

一目山

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 それはまるで、夏空へと続く滑走路のように
 遮るものもなく真っすぐと
 草原の中に道があった






Sunday, July 08, 2018

博多祇園山笠

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 5日より北部九州は記録的な大雨に見舞われ、福岡市内でも避難指示や避難勧告が発動され、今も引き続き注意が必要な状況にある。
 昨年襲った九州北部水害の爪痕も癒えない中、ただただ被害の拡大がないことを祈るばかりである。

 そんな予断を許さない状況ではあるが、博多の町は刻々と山笠ムードに包まれつつある。長法被にステテコ姿の男衆が博多の町を闊歩し、博多の町に夏の到来を告げて回っている。15日のフィナーレ”追い山”に向けて、さらに博多の町はボルテージを上げていくだろう。

 週明けから天気は回復に向かい、その後は晴天が続くようである。おそらく、この雨が上がりきれば博多も梅雨明けだろう。
 山笠が博多の町を駆け抜ける姿が待ち遠しい。まぶしい夏の到来が待ち遠しい、今日この頃である。








 
 

Saturday, June 30, 2018

新橋カリカル

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 今週、出張で日曜から火曜まで東京にいた。
 久しぶりの東京はすでに夏の暑さ。人が多いからかもしれないが、博多より暑苦しく感じる。その暑さの中、キャリーケースを引きずりながら取引先を回る。立ち止まると汗が、ワイシャツの中を滴り落ちてくる。昼食をとる間もなく、地下鉄を乗り継ぎスケジュールを予定通りにこなしていく。その移動の間に遅い昼食をとったのが、新橋駅前ビルの老舗カレー屋”カリカル”である。
 カリカルは創業1958年とあるから、東京タワーの竣工と同じであり、人間でいえば今年還暦を迎える。60年間、新橋カレー界を牽引してきたのである。
 写真は私が食べたチキンカレーである。値段は820円。決して安くはないが、欧風のスパイシーなカレーで、私たちの世代が慣れ親しんだ、懐かしさを感じるカレーである。 一体今まで、何人の人がこのカレーを食べたのだろうか。この界隈のサラリーマンなら、一度はこの店に行ったことがあるのではないだろうか。新橋サラリーマン物語の一面を語る店である。
 一気に食べ終えて支払いを済ませ店を出る。改札を目指してまたキャリーケースを引きずっていく。カレーの辛さに刺激され、汗が噴き出てくる。ハンカチで額の汗を拭いながら次の取引先に向かったのだった。


 

Sunday, June 17, 2018

猟師山

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  ミヤマキリシマが散れば、久住はもう夏山になる。 
  まぶしい夏が、始まろうとしていた。







Sunday, June 10, 2018

ホーム

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 友人の父が亡くなり、お通夜に参列するため、急遽鳥栖に帰った。
 お通夜が終わり、集まっていた友人たちと居酒屋で飲み、スナックをはしごしてその日のうちに博多に帰った。
 写真は鳥栖駅1番ホームで、上り電車を待つ間にスマートフォンで撮ったものである。時刻は10時40分。湾曲したホームを蛍光灯が優しく照らしている。そのホームに女性がひとり、上り電車の到着を待って立っている。おそらく仕事帰りだろう。無事に一日が終わった安堵感のようなものを感じる。

 その情景に引きずられながら電車に乗る。心地よい揺れに誘われ、目が覚めたら博多駅。危なく乗り過ごすところであった。


 


Saturday, June 02, 2018

岩井川岳

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 先週日曜日、九重の岩井川岳と扇ヶ鼻に登った。瀬の本高原の林道から入り、約2時間掛けて山頂に到着した。
 写真は岩井川岳山頂で撮ったものである。鬱蒼とした林道を抜けた途端に視界が開け、広々とした笹原にミヤマキリシマが咲き広がっていた。
 しばらく私たちはその風景に見とれていた。その野原に立ち、今まで見たことがなかった九重の風景に、ため息をついて立ちすくんだ。