Sunday, April 22, 2018

堀田食堂

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 JR筑肥線浜崎駅前に堀田食堂はある。今ではチェーン店のコーヒーショップやハンバーガー屋が駅前を占拠しつつあるが、今も頑張っている大衆食堂を見るのはうれしいものである。
 昨年の夏、浜崎駅を訪れた時からこの食堂が気になっていた。鄙びた駅舎とともにこの食堂が駅の歴史を物語っている。佐賀新聞の記事によればこの堀田食堂は、大正時代に開店したらしいから駅の開業とほぼ時を同じにしている。
 紺色の暖簾には右から親子丼、ラーメン、チャンポン、カレー、うどんと書かれていた。時刻は正午前、その暖簾をくぐって店の中に入った。

 店内に張られたメニューを見て悩んだ挙げ句、ラーメンといなりを注文した。本当はラーメンと炒飯を食べたかったのだが、半炒飯がなかったので仕方なくいなりにしたのである。
 写真がそのラーメンといなりである。たこ焼きのような形をしたいなりに、そして白濁ではない澄んだスープのラーメン。ラーメンにはチャーシューではなく豚肉ともやしにネギが乗っていた。九州では珍しいスタイルである。
 ひとくちスープをすする。失礼だがあまり期待していなかったが、すっきりとした中にも深みがあるスープでなかなか美味い。おそらく豚で取ったスープに、魚介類系を合わせたのではないかと思われる。ネギが甘く際立ちスープを引き立てていた。
 
 間違いなく堀田食堂のラーメンは、この界隈の人たちのソウルフードだろうと思う。帰省すると必ず食べる人も多いのではなかろうか。
 このラーメンで大きくなった若者が、やがて白濁の豚骨ラーメンに出会い、その違いにショックを受け、ラーメンとは何ぞやと自問自答しただろう。
 しかし、若者も年を取るにつれ、故郷が遠くなるにつれて、このラーメンに思いを巡らせるだろう。父母と一緒に食べた、友達と学校帰りに食べた堀田食堂のラーメンを、たまらなく懐かしく思うだろう。
 堀田食堂のラーメンは、故郷のように優しく包みこんでくれる、そんなラーメンである。



 

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