雷山の山頂から下山し始めて1時間ばかりたった頃である。この道と信じて歩いていたら、突然道が行き止まりになった。どうやら間違えたようである。分岐の所まで戻ろうと、来た道を引き返していたら、向こうから青年二人が歩いてくる。私等の後をついて来たようである。行き止まりであることを教えると、二人は顔を見合わせ何やら聞き慣れない言葉で喋り出した。私が「韓国の方ですか?」と尋ねると二人はうなずき、「九州大学の留学生です。」と応えた。一人はがっしりとした体躯の持ち主で堂々としており、もう一人は対照的にスリムで物静かな男性であった。
道は麓の村まで一本。私たちは韓国人の青年二人と喋りながら、山中を歩いた。特にがっしりとした青年は喋るのが好きなようで、日本のアニメについて熱く語り始めた。ドラゴンボールやガンダムが大好きで、それから日本に興味を持ち、留学するに至ったようである。
そうやって考えると、日本のアニメは日本文化・日本人を理解してもらう大きなファクターになっている。国の外交手腕では到底及ばない、日本文化の伝導者であり、その貢献は計り知れない。根底にはあるのかも知れないが、彼等からは反日感情の微塵も感じられなかった。
そうこうしている内に麓の村が見えてきた。その村から私たちはバスで帰ることにしていたので、彼等とはそこでお別れすることになった。最後に棚田が広がる麓の村を一望しながら、彼等の故郷の風景について聞いてみた。今までほとんど聞き手に回っていたスリムな青年が「私の故郷の風景に似ています。なつかしさを感じます。」と村を見渡しながらうれしそうに言った。
私は残念ながら韓国に行ったことはない。しかし、私の勝手な想像では、日本と同じような農村の風景が広がっている。九州と韓国は近い。その源流を感じさせるような風景がそこにはあるのだろう。むしろ韓国にこそ、私がなつかしいと思う田園風景が広がっているのではないかと思う。
最後にバス停で彼等と別れた。バスに乗った私たちに彼等はお辞儀をして見送ってくれている。私たちはバスの中から手を振った。バスは走り出し、彼等は遠ざかる。やがて、その農村の風景に中に彼等は消えて行った。風景の一部になって行った。
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2 comments:
昔ですが日本語指導を市民大学でしていた時、そこにもアニメ好きな若いイタリア人が数人通っていました。
恥ずかしい事に余りアニメに興味がなかったので、生徒さんに多く質問されても頭を抱えるだけでした。
今では、イタリアの子供達は日本の漫画を見ながら成長しているくらいです。
嬉しいですね。 ^^
韓国の青年も言っていました。日本のアニメは世界一だと。彼はアニメを見ながら日本語を覚えたようです。日本のアニメ凄いですね。日本人としてうれしいです。
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