Monday, December 04, 2023

笹川にて

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 銚子に向かう途中、JR成田線の笹川駅で途中下車した。笹川は千葉県香取郡東庄町にある町で、天保水滸伝の話はここ笹川を中心に繰り広げられる。

 天保水滸伝は、天保から嘉永にかけて下総一帯で繰り広げられた飯岡助五郎一家と笹川繁蔵一家の抗争の話であり、主人公の笹川繁蔵はここ笹川の侠客である。講談や浪曲で有名な演目であり、私は特に「笹川の花会」の演目が大好きである。銚子電鉄に乗りに行く計画を立てていた時、笹川を通ることに気づき旅の訪問先に加えたのであった。

 笹川駅から歩いて15分ほどで諏訪神社の境内にある天保水滸伝遺品館にたどり着く。ここには、笹川繁蔵が愛用していたキセルや三度笠、剣客平手造酒が使用した手鎗に徳利などの他に、重要文化財として保存されている古文書などが展示され ている。
 職員に従って館内に入ると、パンフレットと観光案内が入ったクリアファイルを渡された。私が一眼レフを肩からぶら下げているのを見ると、撮影は自由、バンバン撮ってSNSやYou Tubeにアップしてくれと言われる。
 職員の簡単な説明を聞いた後に、なぜ、江戸からも遠く離れ、また、銚子港までも距離のある小さな農村に侠客が集ったのかを聞いてみた。職員の方はすこし考えた後に、もともとこのあたりは幕府直轄地や大名、旗本の小規模領地が複雑に入り組んでおり、この一帯の取り締まりが緩やかだったからではないかと言う。
 職員の方はそう説明した後に、ただ彼らは弱きを助け強気をくじく任侠の徒であり、今のヤクザとは違うんだと熱く語られた。そう説明してくれる職員の方の風貌が色黒で頬骨高く背丈もあり、侠客のように見えて仕方なかったのである。

 遺品館を後にして近くのお寺にある笹川一家三人衆の碑に手を合わせる。お腹もそろそろ空いてきた。近くの高橋食堂で昼食を取り、最後に演目「笹川の花会」の舞台となった宿屋「十一屋」跡を見ることにする。写真がその高橋食堂の半チャンセットである。ベーシックな醤油ラーメンにチャーハン。そして小さな冷奴が付いていた。

 お腹いっぱいになって、食堂からほど近い「十一屋」跡に立つ。ここに関東一円の親分衆が集まって花会(親分衆が集まって行う賭場のこと)が行われたのかと思うと身震いがする。ここで繰り広げられた茂蔵の侠気、そしてその後悲運を遂げる笹川一家に思いを馳せて、笹川の地を後にしたのだった。


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(十一屋)


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