Sunday, February 25, 2007

菜の花


 姉たちと筑後川に菜の花を見に行った。河川敷に菜の花は、今を盛りと咲いていた。
 結婚する前、家内と菜の花を見に行った時のことを思い出した。家内は弁当を作ってきてくれたが、あいにくの雨。しょうがなく車の中で弁当を食べながら、川辺に咲く菜の花を眺めた。
 菜の花が咲く頃、九州では雨がよく降る。この時期降る雨のことを”菜種梅雨”と言うらしい。春雨前線が停滞し、数日降り続くことがある。
 ワイパーでフロントガラスの雨を払い、二人で菜の花を眺めた。家内が作ったタコウインナーを食べながら。

Saturday, February 24, 2007

野良猫

 

  野良猫は私をじっと見つめていたが、私はカメラと煙草しか
持っていないのです。

Sunday, February 18, 2007

天覧試合

 友人のマンションに招かれた。昨年暮に購入したばかりの新築のマンションである。中に入ると広いリビングに脅かされた。私が福岡に借りたマンションのリビングの倍はある。おまけに友人は書斎まで作っていた。
 書斎に入ったら作り付けの棚に、ミニカーとジャイアンツの選手のフィギアがずらりと並べられていた。よく見ればフィギアはすべて背番号3、長嶋茂雄である。
 友人は大の長嶋ファンである。友人の自慢は長嶋茂雄と食事をしたことであり、この話を何度となく聞かされた。
 持ってきていたカメラを取り出し、フィギアを撮っていたら友人は一体のフィギアを指差し、そのフィギアを撮ってくれと言い出した。それが写真のフィギアである。
 私はそもそも野球を見ない。まったく興味がなくパリーグとセリーグの区別さえ付かない。どうしてこのフィギアをと思って聞いたら、このフィギアは天覧試合でホームランを打った時の長嶋なのだと教えてくれた。
 日頃野球を見ない私でも天覧試合のことは知っている。1959年6月25日、後楽園球場で行われた巨人対阪神の試合で、昭和天皇・皇后が見守る中、9回裏に長嶋がサヨナラホームランを打った。時刻は9時12分、天皇が観戦できる時間は9時15分までで、時間ぎりぎりに長嶋は劇的なホームランを放し、任務を全うしたのである。
 友人は私の写真の数少ないファンであり、友人のために何枚も写真を撮った。何枚も撮っているうちに長嶋の笑顔が愛しく思えてきた。そして私の後ろで笑っている友人もまた少年のように愛しく思えたのだった。

Monday, February 12, 2007

ハーモニカ横丁の占い師
































 三連休、東京にいた。久しぶりに家族で吉祥寺に出掛けた。

 ハーモニカ横丁を歩いていると、焼き鳥屋の脇の狭いスペースに、小さなテーブルを出してタロット占いの店が出ていた。占い師は30才くらいの女性で、その狭いスペースで静かに本を読んでいた。
 一旦はその場所を通り過ぎたが、その占い師が気になってしょうがない。普段は占いなどしてもらうことは無いのだが、遠ざかるにつれどんどん気になって行く。家内に「タロット占いって当たるんだろうか?」と聞くと、「そんなに気になるのなら観てもらったら。」と言われたので、引き返して占ってもらうことにした。ひとりで行くのは気恥ずかしかったので、娘二人を連れさっきの店まで戻った。

 店に着くと椅子に座らせられ、小さなカードに氏名・生年月日・星座・血液型を書かされた。次にテーブルの上の小さな水晶に手を当て、その上から占い師が重ねて手を置き、深呼吸を何度もさせられた。
 ようやくタロットカードの登場である。何度も何度もシャッフルし、シャッフルし終わるとひとつの山にカードをまとめ、それを更に三つの山に分けさせられた。占い師がそのカード取り、テーブルの上に並べて行く。過去・現在・未来、占い師は並べ終わるとしばらくその全体を眺めていた。まるで自分が書いた絵の品定めをするようかのに眺めている。「悪い結果が出ても遠慮せずに言ってください。」私がそう言うと占い師は「大丈夫です、私は辛口ですから。」とちょっと笑ってみせた。「正位置のカードが多いです。これは良いことです。」占い師はまずそう言って徐々に語り始めた。

 色んなことを言われた。照れるようなことも言われたが、耳障りなことも言われた。「3年後に仕事で試練が待っています。あなたの会社を取り巻く環境が大きく変わろうとしています。」占い師はそう言った。実際にそうだった。今、会社は大きな流れに吸い込まれそうになっている。これからどうなるか分からない。だから占ってもらおうと思ったのかもしれない。

 最後に占い師は「でも大丈夫です。もし、会社が無くなっても、あなたはあなたのやりたいことで食べていけます。そしてあなたは生涯仕事をしていますよ。」と言ってくれた。私はお礼を言って店を出た。やりたいことって何だろう? 好きなことはあるが、それを仕事にとは考えていないし、それで喰っていけるとは思わない。

 あと3年ある。3年の間に何かを掴まなければいけない。そう思いながら妻の待つ店へ急いだ。  

Saturday, February 10, 2007

天使


 昔、姉のニューヨーク土産にもらった天使の置物。

 だからこの天使はアメリカ人だと思う。

Sunday, February 04, 2007

思い出の店

 金曜日、東京から部長が出張で来たので、スタッフを集め中洲に繰り出した。まずは春吉の鳥料理屋で水炊きで腹ごしらえし、先週行った西中洲のライブバーに部長を案内することにした。
 西中洲界隈は路地が複雑である。おまけにそのバーは通りには看板がなく、途中、道に迷いながらようやく店の前にたどり着いた。「相変わらずマニアックな店が好きだね。」と部長が店のネオンサインを見ながら笑っていたら、スタッフの女性の一人が驚いたように店名を読み上げた。来たことがあるのかと尋ねたら、「16年前に一度だけ来たことがあります。」 と彼女は言った。16年前ととっさに言えたことに、私はちょっと不思議な気がした。
 店に入ると客は私たちだけで、演奏までにはまだ時間があった。薄暗い店内の奥のテーブル席に腰を下ろし、飲み始めたら彼女はさっきの話の続きを語り始めた。
「16年前、新卒で入った会社の歓迎会の2次会でここに着たんです」。 ライトに優しく照らし出されたカウンターを指差しながら
「左から2番目の席に座りました。そして別れた主人が私の左に座りました。」と言った。

 彼女は現在母子家庭で、今日も飲み会に参加するために、小学生の息子を預けてきたのである。驚いていると彼女はさらに話を続けた。
「その日、彼と初めて飲んで、そしてあの席でデートに誘われました。」
「まだこの店が続いているとは思いませんでした。」
よりによってそんな店を選んでしまったことを申し訳なく思い
「嫌なこと思い出させてしまって悪かったね。」と謝ったら、首を横に振って「いい思い出なんです。」と言ってくれた。

 そろそろ客が入ってきて、バンドがチューニングを始めた。彼女の思い出のシートには、若い女の子が二人で腰掛け楽しそうに話している。16年前の彼女はあの子達位だろうかと思いながら、演奏が始まるのを待った。ようやくマスターがステージに立ってマイクを握った。彼女は遠くを見るようにそのカウンターの方をしばらく眺めていた。


動かない人


 人形かと思ったら人間だった。でも、トイレ行く時は決まり悪いだろうな。