Wednesday, August 28, 2024

支那天

支那天


 写真は島原の帰りに立ち寄った熊本の小料理屋で食べた「支那天」である。
 壁のメニューに書かれた「支那天」の文字を見て店主にどんな料理か尋ねたら、鶏を油で揚げたものだと説明してくれた。簡単に言えばチキンカツと言うことになるのだが、これがどうして、薄っすらと下味が付いており、ふんわりとしてとても美味しかったのである。
 あとで「支那天」を調べてみるとどうやら熊本地方の郷土料理のようであり、鶏の支那天以外にも魚の支那天もあるようである。私なりに「支那天」を定義すると、肉や魚を醤油で下味をつけて揚げたカツと言うことになる。

 そういえば「唐揚げ」と言う料理があるが、これには「唐」の文字が入っており、遣唐使経由で日本に揚げる技術が伝わったことに由来しているという説があるらしい。中国のことを「支那」と呼び始めたのは江戸後期であり、おそらく「支那天」は、明治以降に長崎中華街から九州一円に広まった中華料理に西洋料理のカットレットが融合したもので、長崎から熊本に移り住んだ中国人が作り始めた料理ではなかろうかと推測する。
 いずれにしても「唐揚げ」「支那天」ともに中国を意味する名前が入った料理であり、似たようなものでは支那そばやシナチクなどもそうである。そういえば久留米の沖食堂には「支那うどん」なるメニューもある。

 支那と言う呼称は近年差別用語だと言われるようになったが、私は支那という言葉に中国大陸の雄大な風景と長い歴史を感じる。この「支那天」にもその悠久の歴史を感じながら頬張ったのだった。




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