両国橋を渡り、今度は隅田川テラスを歩いてみる。一之橋まで来たところで右に折れ、人形町へ行ってみることにする。時刻は11時、人形町に着いたところで少し早いが、お昼を食べることにする。甘酒横丁で美味しそうな店を探して歩いていたら、一軒の洋食屋に出会す。ちょうど女将さんが表に出て暖簾をかけていたところで、白地の暖簾には黒で「西洋御料理小春軒」と書かれていた。どう見ても洋食屋というよりは鮨屋あるいはそば屋の佇まいである。
中に入ると、先ほどの女将さんとご主人、それに息子さんと思われる若者が厨房にいた。メニューを見せてもらい、メンチカツを注文する。写真がそのメンチカツであるが、店の佇まいと同じく清楚で美しい。
後になって知ったがこの店は明治45年創業、山縣有朋のお抱え料理人を務めた方が開業した店であり、現在のご主人で三代目、息子さんが四代目と百年続く名店らしい。
東京は恐ろしいところである。こんな老舗の名店が街角に普通に存在しているのである。庶民の店として百年あり続けているのである。メンチカツ一皿に明治と言う時代が持つハイカラさと、そしてそれを頑に守り続ける店主の気概を感じてしまう。小春軒は紛れもなく老舗の味であり、そして庶民の店である。