写真は福岡市中央区の上人橋通りにある老舗の大衆食堂「大門」のとんかつ定食(上)である。カツは2枚。写真に入り切れなかったが、これにサラダが付いて料金は850円。コストパフォーマンスはかなり高いと言えるだろう。
この店には千円を超えるメニューはない。定食を中心としてたくさんのメニューがあるが、チャンポンや焼き飯が450円であり、メニューの最高峰である豚ロースステーキ定食でも950円である。さすが老舗の大衆食堂である。その値段設定にうれしくなる。
店は年老いた亭主と恐らくその娘、そして孫娘の親子三代で切り盛りされている。店先には青地に大きく店名を白抜きした暖簾が掛かっており、いかにも和風な定食屋の佇まいであるが、味付けは洋食屋のそれである。恐らく亭主は若い頃洋食屋で修行したのであろう。見ていると、定食を作る合間にブロッコリーのグラッセなどを作られていた。私が食べたとんかつも、デミグラスソースが掛かっており、とんかつと言うとポークカツレツに近い。年老いた亭主は若い頃に修行で叩き込まれた洋食の味を大切に、店を続けて来たのだろうと思う。
ファミレス繁栄の影に一軒、二軒と店を閉じて行く町の大衆食堂。私の自宅近くでも、ここ数年で3軒の店が暖簾を下ろした。理由は亭主の高齢化である。それは仕方がないことなのだが、なんともやるせないものを感じる。この店もやがてその潮目を迎えることになるだろうが、願わくば誰かが店を引き継ぎ存続させて欲しいと思う。ひとりの客の身勝手な願いであるが、いつまでも上人橋通りの顔として、そこにあり続けて欲しいと思うのだった。