元祖長浜屋まで徒歩10分。そんな謳い文句のマンション広告は見たこと無いが、私は結構自慢にしている。最近では、今や全国区になった一蘭や一風堂がもてはやされているが、福岡人はなんやかんや言っても、元祖長浜屋のラーメンが大好きなのである。
年数回、元祖長浜屋の衝動に駆られることがある。その衝動は突然襲いかかり、減退すること無くむしろ増幅していく。先週金曜日に、近所に以前あったバーの常連さんによる新年会が行われた。私もお誘いを受けて参加したのだが、その常連さんの中に、以前そのバーで飲んだ後、一緒に元祖長浜のラーメンを食べに行った女性の方がいた。その時以来お会いすることもなかったのだが、その方を見た瞬間から、私の中で元祖長浜のスイッチが入ったのだった。
今朝、目が覚めると、どうにも我慢できずに、元祖長浜屋を目指した。元祖長浜屋は鮮魚市場の近くにあり、早朝から営業している。早朝からラーメンなんか食べる人がそんなにいるのかと思われるかもしれないが、それが休日の朝はいつも満席にちかく、ひどい時は行列ができていたりもする。市場で働く人、夜勤明けで帰る人、それに観光客。お客さんも様々であるが、一番驚くのは、見るからに地元の人で、家族連れで来ている人が結構いるのである。時刻は朝7時。日曜の朝7時に家族でラーメンを食べに行くことが、どのような過程を経て決定されるか知らないが、少なくとも我が家ではあり得ないことである。
前日、夕食を終えて父親が「母さん、明日の朝はみんなで元祖長浜屋にラーメン食べに行こうか。」と切り出す。洗い物をしながら母親が、「そうね。そう言えば最近食べてないわね。」と賛同の意を表す。母親の意向を気にしながら見ていた小学生の娘と息子が「やったー!私はカタ麺」「僕はナマ麺で替玉!」とか言って明日のモーニングラーメンは決定されるのである。そして、家族みんなで早朝に食べた元祖長浜屋のラーメンの味は、家族の思い出の味として、心に深く刻み込まれるのだろう。
そんなことを勝手に想像しながら、同じテーブルに相席となった家族を微笑ましく見ていた。今度我が家でも提案してみようか。恐らく家内や娘たちは「どうして休みの日に7時前から起きて、あなたとラーメン食べに行かなきゃいけないの!」と一蹴されるだろうけど。